私は、眠れない夜を過ごし、明け方に眠りについた時に夢を見ます。
その夢の中には面白い物が多く、一人で味わうのが勿体ないと思っています。
そこで、このブログで紹介しています。
今回のタイトルは、「信号機マラソン」です。
一枚のチラシ
僕の名前は生田峻祐、大手印刷会社で働く30歳。
最近は、コロナ禍のため、恒例となっていた「マラソン大会」がしばらく行われていませんでした。
ある日、会社に一枚のチラシが入っていました。
そのチラシには、「第1回 信号機マラソン開催」と書いてありました。
チラシの裏に開催要領が書かれていて、社員の一人が大声で読んでくれました。
その内容は、「信号機マラソン開催」が開催され、文字通り「信号機が赤になるたびに止まらなければならない」というものです。
マラソンのルートは、出発点とゴールのみが決まっていて、後はどこを通ってもいいそうです。
ただし、信号が赤になったなら、必ず止まらなければならず、止まらなかった場合は失格となるのだとか。また、先にスタートしても失格になるそうです。
出発点は西町市陸上競技場。ここに集合することになります。
ゴールはスタート直前に発表されるようです。ゴール地点が分かっちゃったら、事前にルートが調べられますからね。
ゴールには、大量のバスが待機していて、ゴールした人だけをスタート地点の西町市まで乗せてくれるそうですが、途中で失格になったり、リタイアした場合には自分で帰りの手立てを考えなければならないルールでした。
それに「信号機マラソン」中は、携帯電話の使用も地図の使用も禁止です。
そして、信号マラソン大会出場者は、防犯カメラやドローンを駆使して追跡されるとのこと。
さらに、信号マラソンの参加者に配布される番号にはGPS発信機が埋められていて、信号機の情報と連動していて、スタートするとGPS発信機は「緑」色に光り、失格になった場合には「赤」色に光るそうです。
なので、違反者はすぐに分かるのだとか。違反したらドローンがやって来て知らせてくれるんだそうですよ。
会社では、上層部から「5人以上出場するように…!」とのお達しがありました。
そのとおり会社から5人が選抜され、フルマラソン経験者で大学までサッカー部だった僕も選ばれました。
他の出場者の中にはフルマラソンを2時間代で完走したり、大学時代に箱根を走ったりした人も含まれていました。
僕の場合、フルマラソン経験者と言っても大した記録があるわけではありません。
ただ完走しただけの経験です。
でも「信号機マラソン」なので、大学時代に箱根で走っていようが、フルマラソンを2時間代で完走していようが関係ありません。「信号機が赤」になると止まらなければならないのですから。
「信号機マラソン」であれば、サッカー部経験の方が活かせるかも知れません。
ただし、サッカー部といっても活躍をしたわけでも、有名校だったわけでもありませんけどね。
それでも、会社の代表として恥ずかしい結果を出すわけにもいかず、僕はその日から仕事終わりや休日に練習することにしました。それもただ1時間程度走るだけの練習です。
1か月の練習でどこまで役に立つのかは甚だ疑問ですね。
僕は「信号機マラソン」の日が「雨で中止にならないか」、「台風が来ないか」、「コロナがまた流行らないか」なんて考えていました。
よーい、スタート!
いよいよ「信号機マラソン」当日がやってきました。
何も起こらず、快晴の日曜日です。
僕は覚悟を決めなければなりませんでした。「完走する」って覚悟を…。
スタート直前に「ゴール」の発表があるそうですが、知らない場所だったらどうしたらいいんだろう?
そんなことを考えていると、開催者の挨拶と注意事項の確認、そして「ゴールの発表」がありました。
「ゴール」は、隣の中町市を通り過ぎて、その先の東町市の陸上競技場です。
東町市への幹線道路は、大きく3つありますが、そのどれもが信号機がたくさんついています。
中町市は大きな市で、車の通行量が西町市と東町市と比べると数倍の量があります。
なので、早くゴールするためには、この中町市をいかに早く通過することにありそうです。
参加者は、地元の人たちがほとんどなので、地図を使わなくても東町市の陸上競技場へは行けるでしょう。ただし、早くいけるかどうかは分かりません。
しばらくして、開催者から「まもなくスタートです。位置についてください。」というアナウンスがあり、参加者は陸上競技場の出口に集まりました。
そして、開催市の一つである西町市長がピストルを手に台の上に立ちました。
そして「よ~い、スタート」という声と「ドン」というピストルの音が響きました。
スタートしてから陸上競技場を出るまでは、少しずつしか進みませんでしたが、競技場を出ると、右に行ったり左に行ったり、真っ直ぐ行ったりするので、走って進むことができるようになりました。
さて、僕は、どういうルートで行こうかと考えていました。
すると、前方で信号違反をした人がいたらしく、早速ドローンがやって来て、
「267番の方、通行違反のため失格です。」というアナウンスすると、また飛び立っていきました。
「267番」の人の胸に付けたGPSの光が「緑」から「赤」に変わりました。
「267番」の人は頭をかきながらも笑っていました。
まだ始まったばかりです。ここから帰るなら西町市の陸上競技場まではすぐそこ。
もしも、中町市の先の方で失格になったら、歩いて帰るのも大変です。
うん、よく考えながら、よく「信号機」を見ながら走らなければ…。
僕は頭の中で「西町市」と「中町市」、「東町市」の地図を広げました。
幹線道路なら分かりますが、近道はよく分かりません。
僕は車で走るのも、近道よりも安全な幹線道路を走るタイプなので、余計に近道を知りません。
僕は「王道の幹線道路を行くか。」と決めて、急いで、そして「信号機」に注意して走りました。
「西町市」を走っている時には、「信号機」が青の場合が多かったので、だいぶ進んだように感じましたが、「中町市」に入ってから急に進みが遅くなりました。「信号機」が赤の場合が多くなったからです。
以前、市役所で働いている友人から「信号機は連動しているから、赤が続いたら赤ばっかりだよ。」という記憶が思い浮かびました。
「そうだ、このままじゃ絶対にいい成績は望めない。」と考えて、裏道を行くことにしました。
裏道に行くと、「信号機マラソン」参加者が多数走っていました。
「こんなにたくさんの人が裏道を走ってたんだ。幹線道路を走っている人が少なかったわけだ。」
僕は、今までの分を取り戻そうと一所懸命に走りました。
走っていると、遠くでドローンの「〇〇〇番の方、通行違反のため失格です。」というアナウンスがあちこちで聞こえました。きっとみんな焦っているのでしょう。
僕が懸命に走ってきたためか、前に見える人がだんだん少なくなりました。
そこで、もう一度冷静に考えることにしました。「信号機」の色に注意を払いながら。
「ここまでの頑張りで、きっと上位には入れるだろう。でももっと上位に入るためにはどうしたらいいんだろうか?」…と。
「中町市」を過ぎて、「東町市」に入ると今度は北上しなければなりません。東町市内の中心部を北上して台地を登ったところに目指す「東町市陸上競技場」はあるのです。
「そうだショートカットしよう。思い出せ、近道を通ったことはないか?三角形の底辺だ。」
僕は「東町市」の地図を頭の中に描いて、ショートカットできる道を探しました。しかも「信号機」が少ない道を…。
「そう言えば、昔、中町市の台地を歩いたことがあったよな。確か東町市の台地に続いていたはずだ。でもきっと、同じことを考える人もいるよな。ならどうする?」
…と考えながら走っていると、前の「信号機」が黄色に変わりました。
僕は慌てて止まりました。「い~や~、危ない危ない。」
「もっと近道があるはず。どこだ?」と再び考えながら走りました。
「とにかく、次に北上できる道があったら左に曲がろう。取りあえず北上するんだ。」
そして、次の道を左折しました。そして北上するルートを走りました。
ゴール!
僕は北上を続け、台地に入るところでまた考えました。
「どこから右に曲がろう?ここが勝負どころだ!」…と。
台地を少しだけ登ったところに、右に曲がる小さな道を見つけました。
「この道は東町市に通じているのだろうか?」と誰かに聞こうと思いましたが、辺りに人はいません。
「ここはいっちょ賭けてみるか?」と決めて、僕は小さな小道へと入って行きました。
その道には信号機もなくて、スイスイ走れました。思いっきり疲れるほど頑張って走りました。
「信号機はまだか?休憩したいよ~。」と思っても、信号機があるはずがありません。自分でそんな道を選んだのですから。
ずっと頑張って走っていると、前方に大きな交差点が見えました。
交差点に付くと、「信号機」は「赤」でした。「やっと休める!」と思いました。
そして、辺りにいた人たちは、首を左側に向けて誰かが来るのを待っているようでした。
そこに突然僕が思いもしない方向から現れたので、みんな驚いているようでした。
なんとそこは「東町市陸上競技場」に入る入口の交差点だったのです。
信号が「青」に変わるのを確かめてから、再び走り出しました。
「東町市陸上競技場」に入ると、歓声が沸き上がり、その中を僕は走りました。
そしてテープを切りました。「信号機マラソン」のゴールのテープです。
なんと、僕は1番でした。
僕は賭けに勝ったのです。
初めての1番の「夢」
私が見た「夢」はここまでです。
私は「夢」で、生まれて初めての1番を経験しました。
生まれてから今まで1番を取ったことがないってのも恥ずかしいのですが…。
でも「夢」でも1番って気持ちがいいものですね。
久しぶりに痛快な夢でした。