仕事を円滑に進めるために大切なことは、職場での協力的なコミュニケーションを取ることです。
感情的に叱責してくる上司に、失敗ばかりの部下など、仕事の悩みは人それぞれ。
今回は、相手を勇気づけ、対人関係を良好に保ち「仕事で人を効率的に動かす方法」について、アドラー心理学の観点から見ていくことにしましょう。
【仕事で人を効率的に動かす方法…!】
うつオジサンは、仕事や人間関係が上手くいかず、「うつ病」になってしまいました。
その果てに、「うつ病」を再発させ、大好きだった仕事や会社を辞めるはめになりました。
「アドラー心理学」は、そんなうつオジサンに今更ながらではありますが、色々と教えてくれます。
そんなうつオジサンだからこそ、逆に「うつ病」に対する「アドラー心理学」の可能性を感じるのです。
【「人間関係の極意は、近すぎず遠すぎず」の距離感…!】
職場で働く多くの人の悩みは人間関係であり、大半の人が職場におけるコミュニケーションに苦手意識を持っています。
コミュニケーションが上手な人と苦手な人との違いは、「距離感」にあります。
他者との距離を近く取りすぎると「押しつけ」や「世話焼き」といったコミュニケーションになってしまいます。
一方、反対に距離を取りすぎてしまうと、今度は「放任」や「回避」になってしまいます。
コミュニケーションの語源は、ラテン語の「コムニカチオ」で「分かち合う」という意味です。
身近な人に対してぞんざいに接したり、逆に遠慮して放任したり回避したりしては、「分かち合う」というコミュニケーションの本来の意味から遠くなってしまいます。
大切なのは、「近すぎず」かといって「遠すぎない」適度な距離のコミュニケーションを取ることです。
【「ダメなのは“人”ではなく、非建設的な“行為”」…!】
私たちは、人の人格と行為を混同してしまう傾向があります。
「悪いことをするのは、その人が悪い人だからだ」と考えてしまうからです。
これに対して、アドラー心理学では、人(行為者)の人格と行為は別のものと考えます。
職場で円滑なコミュニケーションを取るためには、間違いを犯したその人がダメなのではなく、非建設的な行為や失敗があるだけということを意識しなければなりません。
職場のコミュニケーションにおいて、「指摘されること」は「攻撃されること」ではありません。
しかし、間違いを指摘されると人格を攻撃されたような気持ちになることもあります。
その場合、指摘された対象が行為か人格かを区別できていないのです。
また、自分の意見が他人と違うことで恐怖を感じるときも同様です。
異なる意見を言う行為を、人格を否定されることと混同しているのです。
【「相手を裁かず、罰さず、自分を変える」ことこそ建設的…!】
アドラー心理学では、「相手を操作して変えようとすることことは非建設的な行為であり、自分を変えることこそが建設的な行動である」と考えます。
相手を「下位、劣位、負け、誤り」とジャッジし、相手を変えようとしている限り、良いコミュニケーションを取ることはできません。
良いコミュニケーションに必須なのは、変えることができない相手ではなく、変えられる自分を変えようとすることです。
相手を変えたいと思う人は、相手を裁いている人です。
相手が間違っているという「判決」を突き付け、「懲罰」を与えようとしているのです。
これは、お互いの信頼関係を壊す非建設的なものです。
職場においてやりがちな、相手を裁いたり、懲らしめたりする行為は、すぐにやめる必要があります。
そして、顧客の問題解決と顧客満足につながる建設的なことに時間を費やすべきです。
【「感情ではなく、理性や話し合い」で人を動かす…!】
つい感情に突き動かされ、「無意識」に大声を出してしまったという経験がある方もいらっしゃるのでは…?
アドラー心理学では、これを「見かけの因果律」と呼びます。
この場合、感情に突き動かされて無意識に大声を出したわけではなく、相手を自分の思うとおりに動かしたいという「目的」のために感情を自ら作り出し、道具として使っているのだと考えるのです。
私たちが感情を作り出し、相手を動かそうとするのは、強引でわがままなことです。
感情を使って動かされようとした相手は困ってしまい、そこから良好なコミュニケーションは生まれません。
アドラーは、「感情を使って相手を動かそうとするのは子どものすることで、大人になったら理性や話し合いで問題を解決するべきだ」といっています。
これこそが良好なコミュニケーションの秘訣です。
【「失敗を恐れず、責めない」不完全さを認める勇気を持つ…!】
失敗が多いとだめで、失敗は絶対に避けるべきと考える人も多いでしょう。
しかし、失敗とは貴重な経験だと考えることができます。
失敗なくして成功はありません。
失敗はなくすべきことや恥ずべきことではなく、むしろ人を成長させるものと考えるのです。
このように、物事を別な角度から見て、意味づけを変える行為を「リフレーミング」といいます。
いろいろな角度から見て、「意味づけ」を変える…!
人の失敗を責めてしまいがちなのは、私たちが「人は完全でなくてはいけない」という間違った前提を持っているからです。
完全な人間など、この世には1人だっていません。
にも関わらず、それを他人に求めてしまうのは馬鹿げたことですね。
大切なのは、自分に対しても他人に対しても「不完全さを認める勇気を持つこと」です。
他人の失敗を許せるようになると、コミュニケーションも劇的に改善することでしょう。
「失敗を許せると、コミュニケーションも改善する…!」
【「自分が知りたいことではなく、相手が話したいこと」に注目する…!】
相手の話を聴くことは、相互尊敬、相互信頼の関係を築くうえでも有効です。
相手の話を熱心に聴くことが相手への尊敬を伝えることになるのです。
優秀な営業マンの多くは、「自分が知りたい」質問をするのではなく、「相手が話したそうにしている話」を聞き出し、相手を理解するように努めています。
「自分の関心」に関心を持つのではなく、「相手の関心」に関心を持つことが大切なのです。
相手が話したいことを掘り下げていくうえで重要なのが、質問の仕方です。
注意すべきことは、特定の質問をするのではなく、特に話の序盤では漠然とした質問を心がけることが重要です。
特定の質問とは、「閉じた質問」のことです。
「閉じた質問」とは、相手の答えがイエスかノーで終わってしまう質問で、それでは話が発展しません。
一方、「開いた質問」は会話がどんどん広がっていきます。
5W1H(いつ、どこで、だれが、なぜ、何を、いかに)を使うことで、「イエス」「ノー」以外の答えを引き出す…!
【「他人の気持ち」は分からなくて当然…!】
相手の本当の気持ちなど分かるはずがない、と理解することはとても重要です。
「分からないと分かること」は、相手に対する敬意につながります。
その人が抱えているツラさや悲しさなど、その人にしか分かりません。
それを自分の尺度に当てはめて「分かる」といってしまうことは、時にマイナスに作用することがあります。
アドラーは、「共感とは、相手の目で見て、相手の耳で聞き、相手の心で感じること」と言っています。
相手の経験が過去の自分の経験と近いと思っても、それを口に出さない方が相手への敬意につながることも多いもの。
「自分も同じ経験をした」というのは、相手が望む距離感ではありません。
もう少し距離を置いて、相手のパーソナルスペースを大切にすることが相互尊敬、相互信頼を築くうえで重要です。
【「クッション言葉」に置き換えてみる…!】
打ち合わせの予定を取る際、一般的には「明日、打ち合わせをしましょう!」と伝えます。
しかし、「私の都合で悪いですが、次の打ち合わせは明日でいかがでしょうか?」と言い換えると、受け取る側の印象を柔らかくすることができます。
このような言葉を「クッション言葉」といいます。
質問することで、こちらから命令することなく、相手に選択の余地を与え、相手の主体性を尊重することができます。
「クッション言葉」の基本の一つ、「疑問形」…!
「クッション言葉」は、人との距離感を適切なものに変えます。
相手が社外の顧客なのか社内の同僚なのかによっても変わりますが、「恐れ入れますが…。」「お手数ですが…。」「ご面倒をおかけしますが…。」など、一言添えたうえにさらに疑問形を重ねるとよりよいでしょう。
また、「~かも知れません。」「~という方法もあります」など、断定を避けて歪曲的に伝えるのも有効です。
【「相手のグローブ」に向かって「メッセージ」を投げる…!】
コミュニケーションとは、いわゆるキャッチボールです。
相手がグローブをはめる前に、いきなり強いボールを投げるようなことは避けるべきです。
つまり、関心がない話を一方的に振っても、聴き流されるだけ。
相手の話を聴く準備できていない人を、コミュニケーション用語で「レセプター(受容体)が開いていない」といい、聴く姿勢を作ってもらうことを「レセプターを開かせる」といいます。
コミュニケーションはキャッチボールですから、相手が受け取りやすい高さにボールを投げる必要があります。
まず相手が興味や関心を持ちやすい話題を選び、レセプターというグローブをはめてもらったら、相手が理解しやすいように話をします。
これが相互尊敬、相互信頼を築くために必要です。
そのためには、自分基準を捨て、相手が知らない専門用語などは使わないようにしましょう。
【「ユー・メッセージ」を避け、「アイ(ウィ)・メッセージ」へ…!】
友人や部下の良くない行動に対して、勇気くじきを恐れるあまり注意せずにいるのは間違いです。
とは言え、感情的になって叱りつけたりすれば、相手は反発します。
次の3つの目的がある場合には、理性を保ったうえで注意すべきです。
① 思わしくない行動や習慣をやめてもらいたいと伝える場合
② 相手の成長を願う場合
③ チャレンジ精神を取り戻してもらいたい場合
勇気くじきを避けて相手の行動変容を促すコツは、「ユー(あなた)・メッセージ」ではなく、「アイ・メッセージ」で伝えることです。
「ユー・メッセージ」とは、主語が「あなた」の表現です。
上から目線の「ユー・メッセージ」をやめて、主語が「わたし」の「アイ・メッセージ」を使えば、服従の意図を排除することができます。
さらに、主語を広げて、「ウィ(私たち)・メッセージ」を織り交ぜればさらに良くなるでしょう。
※ 相手を勇気づける言葉を「勇気づけ」といい、相手の勇気をくじく言葉を「勇気くじき」といいます。
うつオジサンが考える「アドラー心理学」の効用とその可能性~その6~
うつオジサンは、はじめて「うつ病」になって、職場に復帰する前に「フロイトの心理学」を勉強しました。
何事にも原因があるという考えなので、うつオジサンが「うつ病」になった原因を考えました。
そうすることが「うつ病の再発」を防ぐための方策だと考えたのです。
その結果、自分の性格の脆さに自己嫌悪感を抱いてみたり、いたずらに犯人捜しをしてみたりしてしまいました。
「うつ病」になると、上手くコミュニケーションが取れなくなります。
「うつ病」になったのですから、「再発」を繰り返さないためには、もっと上手にコミュニケーションを取ればよかったと今更ながらに思っています。
うつオジサンは、「アドラー心理学」に出会って、「遷延性うつ病」の方や「うつ病」からの回復期の方、職場に復帰して「うつ病の再発」を心配されている方々の役に立つのではないか?
その可能性は大きいのではないかという考えを持ちました。
現在はまだ「アドラー心理学」を勉強中なので上手く言えませんが、今後は『うつオジサンの闘病日誌』のメニューの中に体系的にまとめたいと思っています。
あなたも「アドラー心理学」を学んでみたいと思いませんか?
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